生産設備の設計では、「何秒で製品を1個つくれるか」が重要な条件になります。ただ、動作時間を計算して、その合計が目標に収まれば、それで設備が成立するわけではありません。
私も、新規設備や改造に関わる中で、計画時には余裕を見ていたつもりでも、実機では能力やタクトが思うように出ない難しさを感じてきました。機械の動きだけでなく、電気・制御、組付けの状態、作業者の動き、客先の仕様などが関係します。
この記事では、タクトタイムの基本的な意味と計算から、設備の動作時間の見方、試運転での確認までを、実務で感じる難しさも交えて説明します。
最初に分けたい3つの時間
タクトタイム、サイクルタイム、リードタイムは、どれも生産に関係する時間ですが、見ている範囲が異なります。
| 用語 | この記事での意味 | 主に何を見るか |
|---|---|---|
| タクトタイム | 利用できる生産時間を必要生産数で割った、製品1個当たりの基準時間 | 必要数をつくるための生産ペース |
| サイクルタイム | 設備や工程が、決めた起点から一連の動作を繰り返すまでにかかる時間 | 設備や工程の動作に実際に必要な時間 |
| リードタイム | 手配開始から納品、材料投入から製品完成など、決めた範囲の開始から完了までの時間 | 加工だけでなく、工程間の待ちや運搬を含む時間 |
タクトタイムを必要な生産ペースの基準、サイクルタイムを工程の実時間として捉える基本的な違いは、キーエンスの解説でも確認できます。
一方、装置の仕様では、設備1サイクルの目標時間を「タクト」と呼ぶこともあります。同じ言葉でも、需要から求めた時間なのか、設備単体の動作時間なのか、ラインから製品が出てくる間隔なのかを確認する必要があります。
必要生産数からタクトタイムを求める
基本式は、次のとおりです。
タクトタイム=利用できる生産時間÷必要生産数
例えば、休憩などを除いた生産時間が1日7時間、必要生産数が1日420個なら、次の計算になります。
- 7時間=25,200秒
- 25,200秒÷420個=60秒/個
これは、必要数をつくるには、平均して60秒ごとに1個を送り出す必要があるという基準です。
計算するときは、時間と数量の対象期間をそろえます。また、休憩、段取り替え、清掃、材料補給、計画停止などを、生産時間の中でどう扱うかも確認します。同じ停止時間を、生産時間から差し引いたうえで、さらにサイクル時間へ加えると二重に計上してしまいます。
1サイクルで2個を同時に完成させる設備なら、120秒で2個でも、計算上の平均生産ペースは60秒/個です。ただし、途中停止や不良品が発生すれば、そのまま必要な良品数を確保できるとは限りません。
複数工程が同時に進むラインでは、最初の製品が完成するまでの時間と、その後に製品が出てくる間隔も異なります。計算結果を設備の目標へつなげるには、1回に何個つくるのか、どの工程が同時に動くのかまで見る必要があります。
設備仕様の「○秒/個」は、測る範囲まで確認する
同じ「60秒/個」でも、含める作業や測り方が違えば、設備に求められる条件は変わります。
| 確認すること | 具体例 |
|---|---|
| 起点と終点 | 搬入開始から排出完了までか。次の製品を受け入れられる状態へ戻るまで含むか |
| 1サイクルの生産数 | 1個か、複数個か。検査で不合格になった製品をどう扱うか |
| 運転状態 | 自動で1回動かす状態か、連続運転か。前後の設備と接続するか |
| 対象品種 | 標準品か、最も動作に時間がかかる品種か |
| 人の作業 | 投入、取り出し、目視確認、ボタン操作を含むか |
| 定期的な作業 | 部品補給、清掃、工具交換などをどこで見込むか |
私の経験でも、仕様書が用意されている案件ばかりではありません。書類があっても、動作や確認範囲まで細かく決まっているとは限らず、客先の考え方や管理の仕方にも違いがあります。
そのため、数字だけを見て理解したつもりにならず、客先と設計側で何を含む時間として扱うかを合わせておきたいところです。未確定なら、そのまま確定値として進めず、どの条件が残っているかを共有します。
設備全体の目的や能力、対象製品などの確認は、「生産設備の仕様確認」でも説明しています。
タイムチャートで動作の順番と重なりを見る
タイムチャートは、横方向を時間として、機械の動作や信号の変化などを並べる図です。どの動作が終わると次へ進めるのか、同時に動かせる部分があるのかを見るために使います。
例えば、製品を「運ぶ→位置を決める→固定する→加工する→取り出す」という流れに分けると、どこで時間を使うかを考えやすくなります。固定する動作は、機械設計ではクランプと呼ばれます。
次の表は、タイムチャートへ記入する内容を説明するための仮例です。先ほどの60秒/個の計算とは別の例で、数値は実際の設備の設計値ではありません。
| 仮の時間帯 | 動作 | 次へ進む条件の例 |
|---|---|---|
| 0.0~0.3秒 | 前工程の設備と搬送開始の信号をやり取りする | 前工程の搬出準備と、自設備の受入準備がそろう |
| 0.3~1.5秒 | 製品を所定位置へ運ぶ | 製品の到着を確認する |
| 1.5~2.3秒 | 位置を決め、クランプする | 製品の位置と固定状態を確認する |
| 2.3~5.3秒 | 加工・組付け・検査などを行う | 工程の完了と必要な判定を確認する |
| 5.3~6.0秒 | クランプを解除し、次工程と信号をやり取りする | 解除と次工程の受入準備を確認する |
| 6.0~7.2秒 | 製品を排出し、次の受入状態へ戻る | 排出完了と機構の戻りを確認する |
すべてを順番に行うなら、この仮例は7.2秒です。別の機構で次の製品の準備ができるなど、条件がそろえば一部を並行して進められることもあります。
ただし、図の上で時間を重ねられても、実際に同時に動かせるとは限りません。機構同士がぶつかる、同じ駆動部を使う、製品がまだ安定していないなど、機械側の条件も確認します。
タイムチャートの具体的な設計例は、ミスミ meviyの解説が参考になります。表や図の詳しさは検討段階に合わせ、どの時間が計算値で、どれが仮置きかも分かるようにします。
機械が動いている時間以外にも目を向ける
設備には、目に見える移動や加工以外にも、次の動作へ進むための時間があります。
| 時間の種類 | 具体例 | 確認材料の例 |
|---|---|---|
| 機械の動作 | シリンダの前進・後退、モーターの加減速、搬送 | 移動距離、速度、負荷、メーカー資料、実測 |
| 検出・確認 | 製品の到着、圧力の到達、固定完了 | センサーの位置や応答、成立条件 |
| 制御・通信 | 制御機器の処理、前後設備や検査機との信号交換 | 信号の順番、応答、動作記録 |
| 工程に必要な時間 | 加圧保持、冷却、乾燥、測定、判定 | 品質条件、工程担当やメーカーの資料、試験結果 |
| 作業者の動き | 投入、取り出し、持ち替え、歩行、補給 | 作業手順、姿勢、作業場所、個人差 |
| 定期的な作業・停止 | 段取り替え、清掃、工具交換、異常復旧 | 発生する頻度、所要時間、生産計画での扱い |
電気・制御で使うPLCは、センサーなどの信号を受けて、機械を動かす順序や条件を処理する制御機器です。機械が目的の位置へ着いても、制御側で完了を確認し、次の動作条件がそろうまで進めないことがあります。
例えば、製品が止まってから揺れが収まるまでの待ち、空気圧や真空が必要な状態に達するまでの待ち、検査結果が返るまでの待ちなどです。ここに挙げた項目を、すべての設備が持つわけではありません。対象の設備に関係する動作や条件を拾っていきます。
なお、異常復旧などの不定期な停止は、通常の1サイクル時間と区別して記録します。生産数を見積もる際には、こうした停止をどこで見込んだかも確認が必要です。
余裕を見込んでも、客先の要求と両立しないことがある
計画段階では、実際のばらつきや、まだ見えていない条件に対して余裕を見込みます。ただ、私の経験でも、余裕を持たせた計画が、そのまま客先の要求する能力やタクトに収まるとは限りません。
余裕を削れば数字の上では収まっても、実機で同じように動くかは別の確認が必要です。制御を含めて検討しても、機械の加速・停止、製品の扱い、機構の動きには、簡単に詰められない部分があります。
時間を見積もる際は、少なくとも次を区別しておくと、後から見直す場所を探しやすくなります。
- 実測や試験で確認できている時間
- 条件を置いて計算した時間
- メーカー資料や類似設備を参考に見込んだ時間
- まだ確認できていない時間
すべてを一つの「余裕時間」にまとめると、必要な待ちと、見積りがまだ粗い部分の違いが見えにくくなります。何に対する余裕なのか、どこを確かめれば判断を進められるのかを残しておくことが大切です。
速く動かすには、力や部品の選定も関係する
私は、応力やせん断、荷重、速度、力など、必要な項目を計算し、購入品についてはメーカーへの確認や選定依頼も行います。それでも、計算上の確認と実機の状態が一致しない難しさがあります。
強度計算を行い、安全率を考慮して許容範囲内と判断していても、実機では部品が壊れたり折れたりすることがあります。瞬間的に大きな力が加わるなど、計画時には捉えきれなかった条件が関係することもあります。
安全率は、想定した荷重や評価方法に対して余裕を設けるためのものです。計算に入っていない力や、別の壊れ方まで一律に保証する数字ではありません。実際に不具合が起きた場合は、どのような状態で、どこへ力が加わったかを確かめる必要があります。
例えば、モーターに取り付けて回転速度やトルクを変えるギヤヘッドには、許容負荷慣性モーメントという制限があります。慣性モーメントは、回転する物の動き始めにくさ・止まりにくさに関係する量です。オリエンタルモーターの選定資料では、瞬時停止や頻繁な断続運転などで、負荷の慣性モーメントが過大になるとギヤヘッドが破損する可能性が示されています。
こうした確認は、タクトを短くするために動作を速める場合にも関係します。動かす速さだけでなく、加速や停止のさせ方、負荷、周辺部品への影響まで見ておく必要があります。
一方、能力を大きくすれば済むわけでもありません。私の経験でも、余裕を持たせすぎると予算やレイアウトに合わず、周辺の部品まで大きくなることがあります。購入品でも選定を誤ることはあり、かといって限界ぎりぎりの選定にも不安が残ります。
どこに、どの程度の余裕を持たせるか。何を変更すると、寸法、費用、納期、保全に影響するか。この判断も、設備の構成や、その時点で変更できる範囲によって変わります。
部品選定については、「機械部品の能力・寸法を決めるときの考え方」で詳しく説明しています。
試運転では、実際の動きを一つずつ確かめる
実務では、機械を組み立て、電気・制御を組み合わせて動かしてから、初めて見えることも多くあります。私も、その段階で出てきた問題を、一つずつ検証していく場面があります。
社内で電気・制御を組み合わせた段階で、どこまで確認できるかは大切にしたいところです。ただ、機械の組付けが完了していない、別のトラブルがある、実際に使う製品や前後設備がそろわないなど、確認できる範囲は案件によって変わります。
時間を測る際は、計画と同じ起点・終点で比べます。タイムチャートがある場合は、その区切りに合わせると、どこで差が出たかを追いやすくなります。
- 自動で1回動かした場合と、連続運転した場合
- 設備単体の場合と、前後の設備をつないだ場合
- 製品を入れない空運転と、実際の製品を使った場合
- 品種、重さ、形状が異なる場合
- 作業者による投入・取り出しが加わる場合
これらの条件が違えば、測定結果も変わります。1回の最短時間だけで判断せず、確認できる範囲で複数回を測り、遅い回やばらつきにも目を向けます。
ストップウォッチ、PLCや機器の動作記録、制御画面の時間表示など、使える方法は設備によって異なります。写真や動画を使う場合は、客先や現場での撮影・利用の許可も確認します。
試運転で確認できなかった条件は、確認済みの条件と分けて残します。社内で動いたことと、客先の実際の生産条件で要求を満たすことも、同じ確認ではありません。
目標時間に収まらないとき、どこから見直すか
時間が足りないときは、どの区間で見込みと差が出ているかを確認します。ライン全体の生産ペースを制約している工程や区間は、ボトルネックと呼ばれます。
例えば、搬送を速くしても、次の検査の完了待ちが変わらなければ、製品が出てくる間隔は短くならない場合があります。最も目立つ動作と、全体の時間を決めている動作が同じとは限りません。
見直すときの着眼点には、次のようなものがあります。
- 測定した品種、運転状態、起点・終点が、目標を決めた条件と合っているか。
- 機械の移動、検出、通信、加工、作業者の動きのうち、どこで時間が増えたか。
- 動作順序や並行動作を変えられるか。機械の干渉や製品への影響はないか。
- 速度や加減速を変える場合、力、衝撃、停止、寿命へどのように影響するか。
- 変更後も、品質、安全、作業性、保全性が成り立つか。
実際には、最初から原因が分かり、この順番で進められるとは限りません。私の経験でも、その場で動きを確かめながら、一つずつ検証することが多くあります。変更した内容と、その後の動きを追えるようにしておきたいところです。
出図、発注、製作、組付けがどこまで進んでいるかによって、変更できる範囲も異なります。関係する担当者と、実行できる対応を検討する必要があります。
仕様や部品、製作・組立などの見落としについては、「機械設計で起こりやすい失敗と防止策」も参考にしてください。
安全と使い勝手も、動作時間と切り離せない
客先によって、安全への要求や確認の細かさには違いがあります。私の経験でも、特にインターロックへの要求が厳しい案件がありました。
インターロックは、必要な条件がそろわないと動作を許可しない仕組みです。安全のためのものには、扉が開いている間は危険な動作を許可しない仕組みなどがあります。
人の安全が第一ですが、操作や確認の条件によっては、製品の投入、調整、清掃、異常からの復旧などがやりにくくなることもあります。使いにくさが、どの作業で起きるのかまで見ていく必要があります。
私は、関係者との話合いで、確認する範囲や担当を明らかにしておくことが大切だと考えています。例えば、通常運転だけでなく、段取り替えや復旧で誰がどこへ入るのか、どの状態で停止させるのか、対策を誰が確認するのか、といった内容です。
仕様書の有無や人の感覚だけで安全を判断せず、設備と作業にある危険を具体的に確認します。タクトに収めるために安全機能を外したり、品質に必要な保持時間を根拠なく削ったりすることは避ける必要があります。
関係する立場によって、見ている条件は変わる
私は、新規設備・改造の双方で、打合せ、現場測定、製図、社内外の電気関係者とのすり合わせ、設定・調整・確認などに関わっています。ただし、担当範囲は流動的で、これだけに限るものでもありません。
同じ設備でも、関係する人によって、確認する内容や重視することが変わります。
| 立場の例 | 確認する内容の例 |
|---|---|
| 客先・生産計画・生産技術 | 必要生産数、品種、生産時間、前後工程、受入条件 |
| 機械設計 | 動作順序、移動距離、速度、負荷、干渉、部品能力 |
| 電気・制御 | 信号の順番、検出条件、通信、停止・復旧時の動作 |
| 工程・品質 | 加工、保持、冷却、検査などに必要な条件 |
| 作業者・保全 | 投入、取り出し、補給、点検、清掃、復旧のしやすさ |
これは役割分担を固定する表ではありません。一人で複数の役割を担う場合もあれば、会社や担当者が分かれている場合もあります。
客先の仕様、管理、考え方、設備の状態、周囲の環境が違えば、同じ数字だけでは比較できないこともあります。似た設備の経験を参考にするときも、どの条件が同じで、何が違うかを見る必要があります。
タクトタイムは、計算と実機をつなげて考える
タクトタイムの計算は、必要な生産ペースを知る入口になります。そこから設備の動き、制御、作業者、前後工程へ条件を落とし込み、実機で確かめていきます。
- 目標時間が何を含むか、測る範囲を合わせる。
- 動作の順番だけでなく、検出や通信、工程に必要な待ちも見る。
- 速さを変えるときは、力や停止、部品選定への影響も考える。
- 確認できたことと、まだ実機で確かめられていないことを分ける。
- 品質、安全、費用、納期、使い勝手への影響を関係者と確認する。
実務では、最初からすべてが見えているわけではありません。計算をしても、メーカーへ確認しても、動かして初めて分かることがあります。余裕を持たせることと、客先の要求や予算に合わせることの両立も簡単ではありません。
その中で、何が分かっていて、何を確かめる必要があるのかを一つずつ見ていく。これから設備設計に関わる方には、タクトの数字だけでなく、数字の裏でこうした検討や調整があることも知っていただければと思います。
参考資料
- キーエンス「タクトタイム・サイクルタイム・リードタイムの意味や違い、関係性」:生産に関係する3つの時間の基本的な違い。
- ミスミ meviy「タイムチャートを書いてタクトタイムを計算してみよう」:装置の動作を分け、所要時間を検討する設計例。
- オリエンタルモーター「選定のポイント」:モーターやギヤヘッドを選ぶ際の、トルク・慣性・運転条件などの確認項目。
